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土方の目に薄桃色の雲が飛び込んだ。
狭い通りの先にある年代を感じさせる塀の上。切り取られたように広がる桜の花達。
それらに、土方は目を奪われた。
「ほう~。
これは見事なものだ…。」
土方は足を止めて、感嘆の声をあげた。
「すごいですよね。
ここからだけでもこれだけ見事なんですよ。
近くで見るといったいどんな感じなんでしょう?
楽しみですねぇ、早く行きましょう!」
はしゃいだ沖田が土方の袖を引いて先を急がせる。
「わかった。わかったから、そんなに急かすなよ。」
土方は子供をあやす目で沖田を見やって、沖田に促されるまま足を進めた。
土方と沖田が目指す桜の木々は古い小さな寺院にあった。
桜は寺を囲む塀にそってぐるりと植えられている。
小さな寺は桜の咲く短い間、別世界へと変わる。
夢幻の一時、桜の力は増し全てを魅了し引き付ける。
獣や鬼、人ではないものさえも引き寄せる。
そう、運命さえも……。
今日この場所で運命は引き寄せられ交差する。
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