2865人が本棚に入れています
本棚に追加
/473ページ
ひらり、ひらり、
はらり、はらりと
ゆるやかに散り落ちる桜の花びら。
時折、強く吹く風が枝に咲く花を乱暴にさらってゆく。
空には満開の桜。
地には花びらが散り積もり、その狭間にあれば天と地との桜花に夢心地に酔わされる。
香りもまた強く鼻を刺激して、さらに酩酊を深めた。
そんな異界めいた桜の木々の下、土方と沖田はゆっくりと足を進めていた。
「あぁ、悔しいなぁ。
こんなにも見事な桜だっていうのに、近藤さんと一緒に見られないなんて!」
沖田が桜を見上げながら顔をしかめて言った。
「そうだなぁー。」
土方も桜に半分見とれた状態で沖田に同意した。
「最近の近藤さんはいろいろあって疲れているようだから、きれい花でも見たら元気になるんじゃないかと思うんですよ。
時間があったら連れて来てあげたいですね。」
「ここんところ毎日、近藤さんは芹沢さん達と一緒にあちこち奔走してるんだ、疲れもするだろうよ。
俺もそれは心配してはいるんだが、近藤さんは簡単に弱音なんざぁ吐きゃあしねぇからな…。
せめて、桜が散る前に時間が空きゃあいいが…。」
「早く落ち着きたいものですね。」
はぁ~、と大きくため息をついて、沖田は土方に顔を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!