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「土方さんはどうです?
桜を見て疲れがとれましたか。」
「俺か?」
「そうですよ。
土方さんも疲れているみたいでしたからね。
どうなんです?元気がでましたか?」
「お前…。
だから、あんなに花見に行こうって誘ったのか?」
「まぁ、それもありますけど、桜が見たいっていう気持ちは本当ですから。
それより、土方さん。きれいな花を見て俳人として何か一句浮かんだりしてきませんか?」
沖田は照れ臭さそうに慌てて土方から目をそらして、話題を変えた。
土方は沖田のその姿に優しい目を向けて、新しい話題にのることにした。
「一句だぁ?
それは、俺が下手くそな事知っててそんな事言ってやがるのか。」
土方はわざと不機嫌な声を出した。
「私は好きですよ。土方さんの俳句。
近藤さんも好きだって言ってましたよ。」
「……。」
フンっと、鼻を鳴らして、今度は土方が照れて横を向いた。
沖田がフフッと忍び笑いをこぼして、桜の木を仰ぎ見た。
二人の歩みは、この時間をこの景色をおしむようにゆっくりと進んで行った。
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