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しばらくの間、魅入られたように沖田と土方は桜の下の姉弟を見つめていた。しっかりと記憶に縫い留めようとするかのようだった。
「ね。いいものだったでしょう。土方さん。」
沖田がにっこりと笑い土方の顔を覗き込んだ。
「まぁ、そういうことにしといてやるよ。」
近づいた沖田の頭を乱暴に押しやって、土方が応えた。
土方の乱暴な扱いをさして気にする風もなく沖田が再び姉弟に目を移した。土方は近くの桜の木へと目を変えた。
「あぁ!
あの姉弟がこっちへ来ますよ。
どうしましょ~。」
驚いた声を出した沖田がオロオロと土方の顔を見た。それに土方は呆れた目をちらりと向けた。
「なんでお前はそんなに慌ててるんだ?
やましい事でも考えてたのかよ…」
「なっ、そんな事考えていませんよ!
でも何故か胸がどきどきするんですよ~。」
沖田は情けない顔をしながらも姉弟から目が離せないでいた。
「馬鹿かお前は、たかだか花見に来てる客ぐらいで。」
「わぁ…。驚きました…。
あの姉弟、びっくりするくらいの美形ですよ!二人とも!
ねぇ、土方さんもそっぽ向いないで見てみたらどうです。目の保養になりますから!」
沖田は土方の袖を引き誘った。その様子から沖田の興奮が土方に伝わる。
土方は渋々目を近づいて来る姉弟に向けた。
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