第三章 体育祭

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「おかしいな…」 ちなみに俺もかなり本気で引っ張っている。 それにも関わらず押し負けている。 「何が…んっ…おか…しいの!?」 リンが必死に縄を引っ張りながらそう言った。 「力だけの差でならこんなに差がでるはずはない…、俺もいるしな」 「そんな事よりぃぃぃ!!ゼクセル君がそんな余裕顔の方がぁぁ…き…気になるぅぅぅ!!」 自分でも言うのはなんだが、俺は岩を一つ持ち上げるくらいの力なら持っている。 それに関わらず同じ人数に加えて俺がいる組が押し負けているのは少し変に感じた。 「まさか…」 相手は魔法を使っている? しかし相手側から魔力を使っている気配は一切ない。 「くそ、考えてもしかたがないか!!」 俺は一回戦目と同様に縄を逆に持ち、走るように引っ張った。 「オーエス!オーエス!」 だがこれでも互角、縄が動く気配はない。 「残り十秒!」 まずい、このままでは最初の遅れ分で負けてしまう。 「くそ!!」 俺は一か八かの賭けに出る事にした。 引っ張るのをやめ、足を地面にめり込ませて縄のつっかえ棒になり、足に限界が来るまで力を溜めた。 足がつっかえ棒になっているので、引っ張られる事はない。 「五、四、三、二…」 「いまだぁぁぁぁ!!」 俺は足に溜めていた力を、引っ張っていたバネを元に戻すように解放し、土を大きく跳ね飛ばして走り出した。 「…!?な…なんだ!?」 「うぉぉ!?」 「嘘だろ!?」 体が一瞬軽くなった。 「試合終了!」 体が一瞬軽くなると同時に銃声が鳴り響き、俺はすぐさま後ろを振り返った。 「C組の勝利!!」 縄の中心を見ると、少しだがC組の陣地にフラッグが移動していた。 「「よっしゃぁぁぁ!!」」 「「キャーー!!」」 「「よくやったおまえらぁぁぁ!!」」 「凄いっすよ先輩!」 各々が歓喜の声を上げている。 「きゃー!やったねゼクセル君!…いて!」 リンが嬉しさのあまり飛びついてきたが俺はひらりとかわし、リンはこけた。 「痛いよゼクセル君…」 「まだ全体で勝ったわけじゃないんだ、浮かれてられないからな」 縄を運営委員が片付け始め、俺達は自分の組のブルーシートに戻ろうとした。 「イカサマだ!」 戻ろうとした時、F組の健が急に審判にそう言った。
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