第三章 体育祭

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「俺達が負けるはずがない!」 「いや、今の試合は公平だった、魔力を使った後も見られない」 「それがおかしいんだ!俺達が負けるのはありえない!」 「…なんでありえないんだ?もしかしてお前達が何かしてたんじゃないのか?最初不自然に押し勝っていたしな」 「く…」 「ほらほら、わけのわからん事言ってないで次の競技の邪魔だからさっさと戻れ」 審判にそう言われて健は言い返す事無く、引き下がった。 「…お前、次も勝てると思うなよ」 健が俺の目の前まで来てそれだけ言って自分の組の陣地に戻っていった。 「やっぱり…あいつら何か使っていたな」 「どうしたのゼクセル?」 「いやなんでもない、俺達も戻ろうルク」 先程の会話からしてF組が魔力を感じ取る事の出来ない何かを使っていたのは確実だろう。 これは一筋縄では勝てそうにない戦いになった。 「あれ?レンは?」 陣地に戻るとレンの姿が見当たらなかった。 「多分次の競技に出場するから選手控えの場所に行ったんだと思うよ」 「そうか」 次の競技を確認するとパン食い競争だった。 「なんでレンはこの競技を志望したんだ?」 「さぁ…」 あいつはそんな食いしん坊だっただろうか? ちなみにこの学校のパン食い競争のルールは、引っ掛けられているパンをジャンプして口だけで取り、そのままゴールに向かうというものだった。 「別に食べきらなくてもいい競技だから大丈夫よきっと」 「それなら安心だ…」 その後しばらくして選手入場でレンの姿を発見。 レンの出番は最初だった。 体術部でのトレーニングの成果を出し、他の選手より軍を抜いた速さで走り出す。 「いいぞー!レン」 「頑張って!レン君!」 レンが一番最初にパンが引っ掛けている場所までたどり着く。 そして大きなジャンプでパンを取ろうとした。 「あーおしい!」 「もう一回いけ!」 だがパンは口に入らず、レンは地面に落ちた。 その間に一人抜かされる。 「いけー!」 だがまたもや失敗。 「今度こそ!」 だがまたもや失敗。 「諦めんなよ!」 だがまたしても失敗。 「…」 結果、ビリ。 レンは口を大きく開くことができず、結局自慢の足の速さを見せる事無く敗北した。
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