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「俺の名前は……ゼクセル」
「ゼクセル……中々かっこいい名前じゃない、で姓は?」
「ない……俺は名前しか知らない。故に母親や父親を見たこともなく、物心ついた時から俺は一人だった」
今のは全部本当の事だ。世界を救った勇者なんて言われてた時もあったが、実際身元のわからない孤児が俺の正体。親が唯一俺に残したのはこの名前だけだ。
「ふーん……なんか悪いこと聞いちゃったわね」
「気にしないでくれ」
というより、大きく口を開けてあくびをしてる所を見ると全然悪びれてるようには見えないが。
「それで、あなたは結局何者なの? なんで急に空から降ってきてゴミ箱にはまっていたの?」
強い衝撃が走ったと思ったらゴミ箱なんかに……その時の姿を想像すると情けないな。
「信じられないかもしれないが、俺は……この世界とは全く違う他の世界から来た」
「ふーん……はい? え? はい?」
一瞬動揺した様子をマキとルクは見せ、そのまま続けて俺は自分のここにくるまでの成り行きを話した。
話すのも……世話になった人間に嘘を付くのに気が引けるってのもある。
何よりも話さない事にはこの世界で生きていく術を知る事が出来ないと考え、喋れるだけの事情は全部伝えた。
「ぐす……あなた苦労したのね! 世界を救ったのに迫害されるなんて」
そして何故か話しを終えた頃には二人は号泣していた。
「この世界以外に世界があるってのは信じがたいけど、この世界には来たばかりなの?」
泣きじゃくりながらもルクはそう質問する。
「あぁ、だけど予想以上に体力的な面でダメージを受けたせいかあんな状態になっていた。感謝してるよ」
ルクにそう言った後、泣きじゃくるマキはハンカチで目元の涙を拭き、俺に顔を向けると再び口を開く。
「あなたここに来たばかりって事は、この世界の事何にも知らないんでしょ?」
「あぁ……何もわからない、魔法ってのもなぜ人間が使えるのかもわからない」
「あなた魔法を知らないの?」
「知ってはいるが人間が使えるというのは聞いた事がない」
「その様子だとあなた魔法を使えないみたいね。…………ところであなた行くあてはあるの?」
「ない、だからあんた達に拾われて目を覚ますまで面倒を見てもらった事には感謝している」
その俺の返答を聞くと、マキは一瞬手を顎に当てて何かを考え、閃いたかのように手をぽんっと鳴らす。
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