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「よし……これも何かの縁だしこの家に住みなさい」
「え? お母さん?」
マキの突然の提案に、ルクが慌てた表情を見せる。
「あなたが何者なのかは大体わかったし、それに何はともあれ拾ってきたのは私達だし、この家二人で暮らすには広すぎるし」
「いいのか? 普通ならこんな素性の知れない人間を家に入れるような真似はしないぞ」
「うーん、まぁあなたが何者かはどうでもいいのよね、丁度バイトが欲しかったのよ」
マキはそう言った後突然椅子から立ち上がり、移動すると言った後で俺を玄関のすぐ隣にあるドアの中の部屋へと案内した。
部屋の中は調理場とカウンターがあり、客をもてなすためのテーブルがそこらかしらにあって、まるで飲食するための店のような内装だった。
「私、喫茶店を営業してるんだけど……一人じゃちょっとつらくてね。買出しとか」
「そんな条件で面倒を見てくれるのか?」
「ええいいわよ、事情も聞いちゃったし……住み込みで働いてくれて構わないわ。ルクもそれでいい?」
「……どうせ駄目って言っても無駄なんでしょ?」
「いぇーい、勿論。大丈夫! 男の子だけど害無さそうだから!」
ルクはそんなマキの対応を見てがっくりと肩を落とす。
「相当嫌そうなんだが……本当に住み込んでいいのか? 当てはないが野宿には慣れてるぞ?」
「気にしない気にしない! あ、それとあなたが他の世界から来たって事、他の人にしない方がいいわよ」
「ああ……勿論わかってる。あんたらは俺がこの世界に来る瞬間を見てたらしいから話しただけだ」
「それならオッケー」
マキの言いたい事はわかる。俺が異世界から来たなんて話し……普通に考えたら信じるはずがない。
むしろ頭のおかしい奴と思われるか、不審者に思われるかのどちらかだ。何故なら他人からすればそいつの経緯なんてのはどうでもいい事だから。
というより……話すなとかいうのなら、その話しで泣くなよ。
「それじゃあこの部屋を自由に使って」
その後、俺が使ってもいいという部屋に案内され、先程俺が寝ていた部屋へと移動した。
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