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「すまない……これからよろしく頼む。あ……それと俺はこの世界の造りや物の名称などをよく知らないんだが、できれば教えてくれないか?」
「んー面倒だからそういう事はルクに聞いて、仲を早く深めるというのもかねてね。ではグッドラック!」
マキはそう言って親指を起てると、部屋を飛び出て下の階へと降りて行った。
「参ったな……あの子は俺が住み込むのを反対してるっぽいんだけどな」
さっきがっくりと肩を下げていたのを見ていたので、多分俺がこの家に住みこむのを快く思っていないだろう。
だが普通はそう思うのが当然だ。もし俺が逆の立場なら……監視をつけるね。
マキは一体何を考えてるのだろう? 予想でしかないが、バイトの件だけじゃなく別の意図があって俺をここに留まらせようとしてるのかもしれない。
実際、行く当てのない俺はすがるしかないのだが。
そもそも……俺自身がこの家、ミフィール家の事を良く知らない。まあ……いいように利用されるなんて事は俺に限ってないだろうけど……
「あっ…………」
入るのを躊躇い、ルクの部屋のドアの前でぼっと考え事をしながら立っていると、中からドアを開けてルクが顔を出し、おもむろにそう声を上げた。
非常に気まずい空気が二人の間に流れる。
「えっと…………その、中に……入っていいか?」
「何の用?」
「この世界の造りや物の名称とかをよく知らないんでな、教えてくれないか? っていう用だが」
「……どうぞ」
そう言って部屋に入る許可を俺に出し、ルクは部屋の中へと戻り、部屋の中にあるベッドの上に座った。その後に続いて俺も入室する。
部屋の中は綺麗に整頓されており、だが少し女の子らしい部分もあって、熊のぬいぐるみなんかが点々と置かれていたりした。
そしてベッドの上に座るルクだが……表情で若干不機嫌なのがわかる。
「そんなに俺が嫌か? ま……見知らぬ男を事情があるとはいえ、家に泊めるってのもおかしな話だが」
「嫌って訳じゃないけど……まったく知らない男の人を泊めるのに抵抗があるというか」
それを世間一般では嫌と言うのではないのだろうか?
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