第三章 体育祭

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「それでは審判のみなさんは用意を始めてください」 その放送が聞こえると共に審判が縄の中心に移動した。 「それでは…よーい…」 空に響く銃声と共に一斉に全員が縄を持った。 「うぉぉぉぉぉぉぉお!!」 「みんなー!!声出せ!!」 「もっと力いっぱい引っ張れ!!」 それぞれが力いっぱいな表情で引っ張っている。 「ゼ…クセル…君!回りを見てないで引っ張って!!んんんー!!」 軽く縄を持って回りを観察していたら、必死な表情で引っ張るリンにそう言われた。 よく見ればレンや前方にいる連中は体を斜めにして一生懸命引っ張っている。 「うぉぉぉぉ!!ど根性ぉぉぉぉ!!」 日頃おとなしめなレンもそう叫んで引っ張っている。 「よし、俺も…本気だすか!」 クラスの中で俺だけだろう、真っ直ぐに立っているのは。 「いくぞ、みんな!」 「「お前が早く行け!!」」 クラスの連中全員にそう叫ばれた。 「よーし…ふん!!」 最後尾なので普通の人よりかは幅が広い。 それをフルに活用して俺はみんなとは逆向きに縄を持ち、走るように縄を引っ張った。 「う…うぉぉぉぉ!!なんだぁ!?」 「引っ張られるー!!」 「きゃああ何々!?」 本気で引っ張ると急に縄が軽くなり、その隙を突いて一気に駆け抜けた。 「試合終了!!C組の勝ち!!」 「ゼクセル君!もう終わったよ!」 「え?」 リンにそう言われて後ろを振り返ると、縄とD組の連中を数人引きずっていた。 「あ、終っていたのか」 終っているのを確認すると、縄を置いてリンの元に戻った。 「どんな馬鹿力してんだよあいつ…」 引きずられていた男子数名がぼそりとそう言った。
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