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彼女は、俺が違う時間に出掛けても俺の20メートルくらい前を歩く。 そして、行く場所が違っても、俺が目的地に着くまで見えなくなることはなかったりする。 顔を見ることができるような位置にも距離にも行ったことが無い。 どこで売っているのか、角度によって色が変わって見える、携帯電話っぽい機械を弄っているのは時々見える。 そこいらの真面目な奴らに比べて、服装は奇抜だ。 うん。 だからこそ、なおさら不思議と目がいくもんだ。 それらがあって、初めて至近距離で顔を見たもんだから一目惚れ。 はい、説明終わり。 繋がったろう? で、だ。 今日は休日、いつものようにふらふらと出掛けた。 残念ながら飲み物が家になくて、買いに行くくらいなら近所の喫茶店で寛ごうと思った。 ドアに鍵をかける前に、後ろを彼女が通った。 いつも通りだ。 10分ほどで到着する筈だった。 少し歩いたところにある工事中の建物。 それを通り過ぎたとき、物凄い音と声が聞こえた。 「危ねぇ!避けえぇ」 おじさんの切羽詰まった声に驚いて立ち止まった。 木材と一緒に工具やらが落ちてきたらしい。 金槌が膝の裏に当たった。 不幸中の幸いといったところか、当たったのは金槌の柄だった。 その拍子に膝が曲がり、後向きに地面に手をついた。 「痛っ」 何故か落ちていたトゲを手の平で踏んづけて、手の平から腕全体に痛みが走る。 微かに足音が聞こえた。 と思ったら、目前に影。 見上げると、彼女が、 跳んでいた。
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