プロローグ

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プロローグ

両親も弟も死んでしまった。 この世にいるのは自分一人…。   大きな喪失感を抱きながら、満身創痍の千堂 司(せんどう つかさ)は壁にもたれかかっていた。 渋谷大通りを爆破した後、司はかつて渋谷スクエア・ショッピングモールと呼ばれていた建物の東館5階に身を潜めていた。 「何で…」 司は、息が洩れだしたかのようなか細い声で呟いた。 こんな酷い状況に落とされなきゃ駄目なんだよ…。 心の中でそう呟くのは、もう何度目なのだろうと思った。 だが、司がそのように感じているのは必然的なことかもしれなかった。 これまでの日常を望んでも、帰ってくるのは郷愁と虚しさ…、そして例えようのない悲しみばかりなのだ。 現実に存在しているのは《腐りゆく死の匂い》と、《目を逸らすことさえままならない、狂気と絶望》だった。 若干17歳の少年にとって失うモノは大きく、多すぎた。   今は眠ろう。またすぐに出発しなきゃ…  心の中で呟き、司の意識は深い闇へと滑り落ちていった。 目の前の現実から逃れる術は、今ここで命を絶つか、幸せな夢の中で笑うかの二者択一だけなのだ。 両者を選ばず、生きてこの街を抜け出すことを望んだ司は、右手に父の形見の拳銃を握り締め、静かに寝息をたて始めた。
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