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「悔しいんでしょ?」
「………」
同じ質問。
けれど宍戸は答えない。
いろんな気持ちが混じっていて……自分でも整理できないから。
そんな自分をわかっていてか、いきなり姫はベッドから降りた。
そして……俺は温かいものに包まれる。
「無理しないで…ゆっくりでいいから話して?」
一瞬何が起きたのか理解ができなかった。
けど、姫の声の近さと背中の温もりで、やっと姫が抱きついてきたのだと理解した。
「俺は…」
「うん」
「…長太郎が俺を越えていった感じがして……嬉しかった…けど、なんか寂しくて」
「うん」
「後輩の成長を喜ぶべきなんだけど……やっぱ羨ましがってる俺がいて」
たどたどしくも自分の言葉に相槌をうってくる姫。
そんな彼女に安心してか、または彼女の温もりに安心してか宍戸は自分の気持ちを吐き出ていった。
後輩に負けた悔しさ。
せして後輩の成長への喜びと寂しさ。
さらには後輩への嫉妬。
何もいわず、姫は頷きながら聞いていた。
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