105人が本棚に入れています
本棚に追加
「何を言ってる。レスター国はあの時から幾度と無く魔物の襲撃を受け、罪の無い人の命が大勢奪われた! 貴様の命で無ければ、何故魔物はレスターを襲った!? 何故ダイアの両親は死ななきゃいけなかった!?」
乱暴にテーブルを叩き、アロンダイトは叫び、イリアは悲しそうに目を伏せて答える。
「私は、確かに貴方の国であるレスター国に魔物を派遣しました。でも、目的は襲撃ではありません。貴方のお父様のご存命と、対話を求めて派遣したのです。でも――」
アロンダイトを見つめる紫の瞳から涙が零れ、蝶の刻印を伝い、細い顎から雫となって落ちる。
「貴方のお祖父様――ランスロットは一切話を聞いてはくれませんでした。それどころか、派遣した私の部下を惨殺しました。国を襲ったと言う汚名を着せて……」
イリアの告白を聞いている、アロンダイトの握った拳から、血が滲んだ。綺麗に切られた爪が、剣を使い込んで厚くなった皮膚に食い込み、血を滲ませていた。
「でたらめをぬかすな! レスター国王を侮辱するのか!?」
「でたらめではありません!」
イリアは悲鳴の様な声を上げる。このままでは平行線を辿るかもしれない、と睨み合う二人の間にハスターが入った。
最初のコメントを投稿しよう!