食堂

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「私は、貴方のお父上に一度お会いした事がある。貴方の様に正義感が強く、真っすぐな男だった。お父上と貴方の違いは、お父上は非常に慈悲深かった。魔の者であっても、慈悲の心を持ち、戦意を失った相手に止めを刺す事はしなかった」    ハスターは敵意すら向けるアロンダイトに飲まれる事なく、言葉を紡ぐ。   「そのお父上が魔王と対峙し、お亡くなりになった。だが、その後から魔物達は弱体化した。オーガが著しいな。体格など昔の半分以下まで小さくなってしまった」   「それは魔王が父上との戦闘で重傷を負ったからだ」    アロンダイトの言葉を、ハスターは首を横に振って否定する。   「イリアさんをご覧なさい。怪我などしてない」    ダイアはハスターの言葉に拒否反応すら起こし、席を立って斧を片手に食堂内を歩き始める。まるで、偵察する様に。   「私は貴方のお父上の魔の者に対する態度と、魔物の弱体化に対し、一つの仮説を立てた。『魔王は、人々との敵対を望んでいない』とね」    ハッとして顔を上げるイリアを見て、ハスターは微笑む。   「貴女にお会いして、この仮説に確信が持てました。私はアロンのお父上の意志を継ぎ、人々との懸け橋になりましょう」    ハスターは片膝をつき、恭しく頭を下げた。
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