食堂

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「そんな……裏切るのか?」    アロンダイトは言葉を失った。状況を理解出来ず、恭しく頭を垂れるハスターと嬉しそうなイリアを驚愕と絶望を混ぜた表情で見ていた。   「裏切りではない。さっきからイリアさんも言ってるだろう。魔の者は人間との交流を望んでいる。貴方のお父上もそれを望んでいた」    ハスターの声は、静かで温かな食堂に響く。ダイアはそんなハスターに怒りすら感じて身を震わせる。   「魔物が人間との交流を望んでる? ならなんで魔物は人間を襲うんだ? そこを教えなよ。あたしの納得出来るようにな!」    石壁を殴り、憎しみを吐き出す様に叫ぶ。襲いかかる事だけは必死に堪えている。ハスターもイリアの真意も読み取れないのだ。  イリアは沈黙する。全てを一度に話して良いものか、それを考えてしまう。   「私達が、何故人々を襲うのか。そもそもの理由を、貴女は知っていますか?」   「ハン! どーせ食うためだろ!?」   「そうです。人は沢山の食べ物を食べているため、他の生き物に比べてとても美味しいんです」    変わらない柔らかい口調で、さらりと言った言葉にダイアは嘲笑に似た笑みを浮かべる。終始オロオロしていたテレスは、イリアの穏やかさからは想像出来なかった事にビクリと体を竦ませた。   「それに、人を食べるととても力がつくんですよ。ですから私達は好んで人を食べていました」
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