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イリアは微笑む。
それはとても、嬉しそうな微笑みだった。
「着いて来て下さい」
そう言って身を翻すイリアに、アロンダイトは迷う事なく着いて行く。
「アロン!」
ダイアは怒りに顔を赤くして、アロンダイトの肩を掴んだ。
「今まであたしらが何を目標にして来たのか忘れたっつーんじゃないだろうね! 魔王をぶっ倒す為だろ!?」
怒りの中に不安が見え隠れし、アロンダイトは静かにダイアの手を掴んで避ける。これは決して拒絶ではないと言う様に。
「俺の目標は、人々が安心して過ごせる世界を作る事。魔王を倒す事じゃなかった」
「なっ……!」
「ダイア。君の魔物を憎む気持ちは、よく解っているつもりだ。でも、貴女の目標も同じだったはずだ」
アロンダイトの目は、愕然とするダイアに真っ直ぐ向けられている。
「思い出して欲しい。最初、何と言った? あの風の強い日に、レスター八世に何と誓いを立てた?」
ダイアの脳裏に、剣を捧げて誓いを立てた時の光景が蘇った。
そして、記憶の中のダイアは言った。
『私、ダイア=ドレンサーは世界平和の為にこの身を投じます。この身、朽ち果てようとも、世界の為に、神に捧げます』と――。
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