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シーンとした空間が一瞬でざわめきに変わる瞬間。
それは重圧から解放された時に起こる物だと思う。
帰りのホームルームが終わり、さぁ帰ろう、と机を後ろに運んだ時に先生が僕の方へ一直線に歩いて来て立ち止まった。
「神有月!」
いかにも体育会系でありながら数学担当である黒沢教諭は少し白髪が交じりだした頭を少し下げて僕を見ながら手に持った封筒を手渡した。
「はい?」
用件は分かっていた。
「悪いが、この封筒に入っているプリントをこの前の集会を欠席したお母さんに渡しといてくれ」
「分かりました」
このやり取りも何度目だろうか。
僕の両親は仕事ばかりで、学校の行事より、もっぱら仕事を優先する人達だ。
いわゆるワーカホリック、それも重度の。
最後に顔を見た日も覚えていないし、小学生の時の授業参観すら来た覚えが全くない。
今回の集会の資料は多分、文理選択の件だろう。
正直、息子の文理選択はあの両親の眼中に全くないということを想像するのは難しくない。
僕は神有月・薙(カンナヅキ・ナギ)。
ナギと言う名前と、僕の一見中性的な顔のおかげで女の子に間違えられる時があるけど、僕は十六歳の普通の男子で高校一年生。
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