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入ってきたのは少し白髪交ざりの偉丈夫だった。
「クスノキ、これ例の‥‥って、またカンナをいじめてるのか?」
扉を開けて入ってきた男の人は僕を哀れむような視線で見た後、楠に手に持った小さな何かを投げ渡した。
「うっるさいわねぇ、飛高。人の楽しみに口を出さないでくれる?」
楠は何かを右手で受け取ると、嫌そうな目を飛高に向けた。
「楽しみ、って‥。あのなぁ、カンナの事も考えてやれよ」
「ほんっとに、五月蝿いわねぇ! 神有月は私の商売道具なの! 道具に意志はないの」
楠が駄々っ子のようにまくし立てると、飛高がやれやれと言わんばかりに肩を竦め、
「一つ、教えてやろう。道具に意志がない、というのは間違いだ」
「八百万(ヤオヨロズ)を知ってるか?」
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