序章

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 それを確認した警備兵は腕を上げる。すると鉄格子前にいたふたりの警備兵はそのままに、詰所から新たにふたりの警備兵が現れて一同のもとへ近づいてきた。新たに現れた警備兵ふたりは聖人の護衛のボディーチェックをするようだ。  キョウコは警備兵が護衛のボディーチェックを始めたのをきっかけに、首から下がっている身分証を外し、腰の後ろに装着していた拳銃をホルスターごと外して警備兵に差し出した。警備兵は身分証と手元の紙、それにキョウコの顔とを見比べ異常がないことを確認すると、ホルスターに『キョウコ・カシヤ』と印字された小さなタグを付け、身分証はキョウコへ返した。  聖人の男も同じようにスーツの内側、右脇に隠した拳銃を警備兵へ渡した。警備兵は渡された拳銃に『ダウニー・マクラウド』と書かれたタグを付けたが、身分の確認は玄関でキョウコがしたように、ちらりと十字星の勲章を見ただけで済ませた。  実は騎士団の持つ身分証や聖人が付けている十字星の勲章には超小型のICチップが仕込まれており、玄関ホールや重要な部屋の直前にある感知器によって絶えず身分証の確認がなされているのである。特に聖人が付けている十字星の勲章には別の処理がされており、ヘルメットのバイザー越しに見ている警備兵は、肉眼でそれを見た時とはまた違った複雑な文様を見ていたはずだ。  ほどなくしてボディーチェックが終わり、一同から預かった物品が警備兵たちによって詰所へ運び入れられたのち、作業の終了した三人の警備兵は一同の前後についた。  最前列についた警備兵は胸のポーチから古風な刻みのついた鍵を取り出した。それを一同の前に立ちふさがる黒色の鉄格子にぶら下がっている、やけに大きな錠前の上部へ挿し込んでいく。だが警備兵が鍵をひねっても、かちりと音がするだけで錠前は開かない。よくよく見ると錠前には鍵穴がもうふたつ付いているようだ。
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