序章

8/14
前へ
/14ページ
次へ
 仮に鉄格子まで辿りついたとしても、それが突破できなければ意味が無い。錠前は酷く重い代物で、また頑丈だ。バーナーで焼き切るにしても、鉄格子の方から始めるのとどっちが早いかというほどである。錠前自体もからくり錠と呼ばれるもので、解錠方法を間違えると壊れて開かなくなってしまうという厄介なものだ。  新たに加わった三人の警備兵とともに曲がり角を抜けた一同が見たものは、通路と同じ材質の石で作られた巨大な扉だった。石版のようなそれは通路一面を支配し、圧倒的な威圧感を醸し出している。扉のすぐ脇には扉の開閉をするためらしき操作盤があった。 「ここで一旦お待ちください」  先導していた警備兵が一同へ制止を掛ける。その間に一同の後ろから付いてきていたふたりの警備兵が扉の両脇に並び、銃を構えて警戒態勢に入った。しかし既に鉄格子前でチェックを受けているためか、それ以上のことはしてくる様子はなかった。  キョウコは聖人を伴って操作盤の前に立った。これから先は機械のチェックが必要なのだ。  キョウコは事前に確認したマニュアル通りにボタンを押し、ついでカードスロットに自分の身分証を通す。操作盤は一瞬の間を置き、それから緑のランプをともして認証が済んだことを示した。 「聖人様の認証が必要です。こちらの操作盤へ十字星の勲章の提示をお願い致します」  キョウコが操作盤から離れて聖人へ操作を促す。それを待ちかねていたのか聖人の男は大股に歩み寄り、操作盤へ向けて十字星の勲章を見せつけた。操作盤はこれを自動的に感知し、やはり少々の間を置いて、もうひとつあった緑のランプをともした。  緑のランプをふたつとも点灯させた操作盤は、小さく短い電子音を鳴らし始めた。それとともに扉の前で銃を構えていた警備兵が扉の脇に避け、銃を胸の前に捧げて持つ特徴的な敬礼をした。聖人や歴史に詳しい者なら、これが剣や弓の時代から騎士団に伝わる儀礼的なものだと知っているだろう。  警備兵が敬礼を始めてすぐ、石臼を挽くような、石と石とが擦れ合う重い音を響かせながら徐々に扉が開き始めた。その速度はせいぜい大人がのんびり歩くような速さといったところだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加