93人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
夏の匂いも薄くなって、半袖よりも長袖を選ぶようになった秋の朝。
いつもと同じ道を歩いて、いつもと同じ駅に着く。
電車が到着するまでのわずかな時間は、毎日の生活の中でも大切にしている時間の1つだった。
この短い時間の間にホームから嫌がられるように1番隅に置かれた喫煙コーナーに向かい、煙草に火を点ける。
これから始まる忙しい1日を思い、少しだけ気合いを入れるいつもの時間。
ゆっくり煙を吐きながらフワフワ綿菓子のような雲を見ていた。
「すみません。火貸して頂けますか?」
突然真横から声が聞こえて反射的に声の方を向いた。
そこに立っていたのがご主人様だった。
最初のコメントを投稿しよう!