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お店の商品の中でも一番安いストールをご主人様に差し出す私に、ご主人様は不満そうに言った。
「本当にこのストールで良いの?自分の好みより、金額を優先させたでしょ?」
初めて食事に行く人に服やら靴やら買ってもらうなんて気が引けてできる訳がない。
「いいんです!気に入ったんです!」
そう言いきると、ご主人様は納得いかないらしくぼそっと言った。
「金額が?」
「っんな!!!」
むっとする私の顔を見たご主人様はやれやれといった表情で少し笑った。
「まぁいいよ。じゃぁタグを取ってもらおうか。」
そこでご主人様は店員さんを呼び、私の選んだ服や靴、ストールのタグを外すように言い、私の元着ていた服や靴は包んでくれるようお願いした。
再び試着室に入り、再びドレスに袖を通す。
やっぱり鏡の前に立つと恥ずかしかった。
こそこそとご主人様の横まで移動し、自分の服と靴を店員さんに渡す。
慣れない恰好で恥ずかしいやら申し訳ないやら、色々な感情が混ざり、おどおどとした私は明らかに挙動不振だった。
そんな私を見たご主人様は面白そうに少し笑って、ふいに私の耳元で囁いた。
「大丈夫。君は綺麗だよ。堂々としていれば良い。」
ご主人様の息使いは熱となって吹き込まれ、その熱は私の全身に行き渡った。
「でも……。」
言いかける私にご主人様は言った。
「大丈夫。安心して堂々としていれば良い。」
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