朝と夜

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店員さんが包んで差し出してくれた荷物をご主人様はさも当たり前のように持ち、店を出ようとした。 ご主人様について行きながら慌てて言う。 「私の荷物ですから、自分で持ちます!」 ご主人様は私の歩幅に合わせてくれながら、呆れたような顔で言った。 「せっかく綺麗な恰好してるのに、こんな荷物持ってたら勿体ないよ。本当はバッグも揃えてあげたかったんだけどね…。」 そう言いながら私のバッグを取った。 一体、ご主人様が何をしたいのか、私をどうしようとしているのか、さっぱり分からなかった。 「私、さっぱり分からないんですけど…何でこんな事をしてくれるんですか?」 ご主人様の横顔を見ながら聞いてみる。 「勿体ないからだよ。もっと普段からお洒落に気を使って、堂々としていて、色々な事をすれば、もっと魅力ある女性になれる。女性は皆、綺麗になりたいし、男からもモテたいでしょ?そうなれるのに、そうしない。良い女になる為の努力は楽しいよ。僕はその楽しさを君に教えたいだけだよ。」 私はそれまで良い女になる為の努力はしていなかった。 だから、ご主人様の言う楽しさがどんな物かも分からなければ、自分が良い女になれるとも思っていなかった。 男性にモテるタイプでは無いと思っていたから、何となく男性にも苦手意識を持っていたような気もする。 ご主人様はそれら全てを分かっていて下さったのだ。
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