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ご主人様に連れられて行ったお店は落ち着いた雰囲気のお洒落なイタリアンレストランだった。
ご主人様との食事は楽しい時間ではあったけれど少し変わっていた。
ご主人様は私にナイフ、フォーク、スプーンの使い方や、その他のテーブルマナーから、綺麗に見える歩き方まで教えて下さった。
その教え方も、決して当時の私を否定する事なく、より魅力ある女になる為に…という話だった。
食事も終わりに近付いた頃、ご主人様に言った。
「私、あなたが教えようとしてくれるのは嬉しいけど…そんなあなたが言うようになれる自信が無いです…。ごめんなさい。」
ご主人様はそんな私を優しく微笑みながら言ってくれた。
「何を謝る必要がある?何も完璧になれと言っているんじゃないよ。努力をし続ける楽しみを知れば良いんだ。君が望むなら、教えてあげる。それに君は気付いているだろう?いつもと違う服を着ているだけで、男の君を見る目が確実に変わっている事。」
そう言われて、ふと周りに目を向ける。
斜め向かいのテーブルに座っている男性と目が合った。
綺麗な女性を連れたその男性は、柔く微笑んで微かに目配せをした。
「確かに…何か違うかも…。」
ご主人様に向かって言うとご主人様は当然だという表情でワインを口に含んだ。
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