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「どうぞ。」
バーテンダーの声と共に出されたグラスの中には、濃いオレンジ色のカクテルが注がれていた。
ご主人様と乾杯をして、ゆっくり口をつける。
甘くて飲みやすく、そんなにアルコール度数は高くなさそうに感じた。
「おいしいです。」
ご主人様とバーテンダーに言うと、ご主人様は満足そうな笑顔でバーテンダーに聞く。
「このカクテルの名前は?」
「リトル・プリンセスですよ。」
そのカクテルが選ばれた基準って何だろう?とぼんやり考えていると、ご主人様が説明して下さった。
「リトル・プリンセスはその名の通り、幼い姫。初めて社交界に出た姫は、何もかもが初めてで、戸惑う事が多いだろう。今の君の状態と重ならなくはないんじゃないか?」
「私、そんなに戸惑ってるように見えるんですね…。」
そんな風に見られる自分を恥ずかしく感じて俯くとご主人様に言われた。
「いいじゃないか。誰だって初めての事は戸惑うし、緊張するよ。それに戸惑う幼い姫の姿は見ていて気分が悪いものじゃない。むしろ、可愛いよ。」
ご主人様を見ると、とても素敵な笑顔を浮かべている。
「…からかってます?」
恥ずかしさをごまかす為にわざと可愛くない事を言ってしまった。
「ほら!その反応がいかにもリトル・プリンセス!」
ご主人様は私の反応を面白がって笑った。
ご主人様にからかわれて、私が怒ったフリをして、それをご主人様が楽しそうに笑う。
それはとても居心地が良かった。
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