93人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
先程の質問が自分に向けられた物か、一瞬躊躇した私は少しだけ首を傾げてみた。
「ライター忘れてきちゃったみたいで…。すみませんが火、貸して頂けませんか?」
彼は申し訳なさそうな笑顔を浮かべながら私に言った。
つられて思わず笑顔になりながら答える。
「良いですよ。ちょっと待って下さいね……。」
そう言いながら、バッグの中からライターを取り出して彼に渡す。
火を点ける彼を見る。
センスの良いネクタイにスーツ姿。
身長はさほど高くないけれど、知的な匂いのする男性だった。
長く煙を吐いて、彼は私にライターを差し出してきたけれど、一瞬考えて彼に言った。
「どうぞ持ってらして下さい。私、予備のライター持ってますし…。それに煙草吸ってると、知らない内にライターって増えません?増えすぎて消費に困ってるんです。」
困ったように笑うと、彼も「あぁ」と言いながら軽く微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!