事の始まり

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「ファーナが覚えていないのも無理はないわ。あなた……あの王宮で随分虐められていたもの」 そういうエリザも虐めにあっていた。 小国とはいえ、王女である。 フォーレンの貴族たちにとってあまり愉快なことではないのだろう。 ましてや、この国の後継ぎであるエリザは別にしても、イルファーナにはフォーレンの王位継承権がある。 誰もが、イルファーナを警戒していた。 「………で、お父様。どうして今頃?」 「第一王子が他国に行っていたのだが、このたび正式に皇太子につくことになったらしい。………で、早い話が花嫁探しのパーティーらしい」 「――――――まさか、私たち二人がその候補?」 「いや、エリザはこの国の世継ぎだ。世継ぎ同士の結婚は無理であろう。そういうわけではなく、親戚として集まれ、ということではないか?」 気負うことなく、楽しめばいいのだと父王は言うが、エリザは複雑な表情をしていた。 「お父様、どうしても行かねばなりませんか?」 あまりいい思い出のない、フォーレンに行く気が起きないのか、珍しく消極的だ。 「――――無理には言わないが…………」 父王はイルファーナに目をむけた。 先日『何処かに嫁ぐ』宣言をしたイルファーナだが、相手がフォーレンとなると違ってくる。 かつて自分たちを虐めただろう令嬢たちが今もいるに違いない。 再び虐められにいく、というのも気がのらない。 だが――――千載一遇のチャンスとも言える。 「――――もう少し、時間を下さい」 どうしても素直に頷けない理由がイルファーナにはあった。  
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