事の始まり

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国王に呼ばれてから、イルファーナ王女が沈んでいるようか気がし、カルは声がかけずらかった。 お付きの侍女も近寄れない。 「……………王女様、お気にいりの紅茶でもいれますか?」 「いらない」 「じゃ、ケーキは………料理長自慢の…………」 「今はいいわ」 カルが何をいってもイルファーナは考えごとをやめなかった。 しかたない、とカルも退出しようとする。 (………話があったんだが………今は無理……か?) 「カル………」 「――――はい」 「この間の……」 「この間?」 「ええ。誰かに嫁ぐ………という……」 「ああ、ありましたね」 「…………フォーレンから手紙がきて………パーティーに参加しないか……と」 イルファーナの言葉にカルは表情を変えずに答える。 「よかったじゃないですか。王女の望みの第一歩……」 「だけど………どうしても……」 諦めきれないことがある。 一週間前に言われた言葉。 『誰かの幸せの上に成り立つ幸せなんか望んでいませんよ』 『イルファーナ様にも幸せな結婚をしてもらいたいと思っていますよ』 もし……許されるなら、王女としてではなく、一人の女として幸せを望んでいいというなら――――。 何かを躊躇う王女に、カルが口を開く。
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