事の始まり

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「………お話があるのですが……よろしいですか?」 カルの言葉に、イルファーナは顔をあげ、正面から見る。 「―――――突然ですが………お暇を頂きないと………」 「――――えっ?」 突然の台詞にイルファーナは唖然とした。 目の前の従者が何を言ったのか漸く理解できた時、涙が零れ落ちる。 カルはぎょっとした様子で王女を見る。 「――――どうして……?」 「………父が帰ってこいと………これでもかなり延ばしたんですが」 その言葉に、目の前の青年にも大切なもの―――家族がいることに気付く。 (……カルはこの国の人ではないもの) 僅かな期間しか一緒にいなかったのに、こんなにも淋しい。 彼が側にいる生活に慣れてしまい、いなかった時な過ごし方を思いだせなかった。 「…………そ……いつ?」 「明日には」 本当に急な話である。 だが、イルファーナには彼を手元に留めるものがない。 (…………こんなにも好きだったのね) 思わず泣き出してしまうぐらいに――――。 引き止めることは彼を困らせてしまうこと。 「………そう、ご苦労様」 涙を拭い、笑顔で言う。 今まで一緒にいてくれたことに感謝しているから、せめて笑顔で送りだしたい。
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