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大国に囲まれた小さな国のお姫様の話――――。
バシャーン。
大きな水音をたて、王女の頭上から大量の水が降り注ぐ。
着ているドレスから全てがびしょ濡れだ。
大量の水のせいで、せっかく整えた髪も乱れ、顔に張り付く。
それを静かに手でかきあげ、王女は何もなかったように優雅に上を振り仰ぐ。
美しく着飾った女性たち三人の手には似つかわしくないバケツが見えた。
自分たちが犯人だと、隠すつもりはないらしい。
三人の女性たちには何れも嘲笑が読み取れる。
「あーら、失礼。……クスクス」
「まあ、大変。イルファーナ王女様がバケツの水を被ってしまいましたわ」
「このような隅に王女様がいるとは思いもいたしませんでしたわ」
三人それぞれの言葉を聞き、王女―――イルファーナはニッコリと笑顔で相対する。
「――――お久しぶりですわね、ドリュー公爵令嬢マリア様、ベネデュリア伯爵令嬢ティア様、ライン男爵令嬢ソフィア様」
水を被ったということすら感じさせず、見事に三人の女性の名を言う。
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