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「ご丁寧にどうも―――。クスクス、この辺りから埃のような臭いがいたしましたので、お水を撒かせて頂いたのですわ」
「まさかイルファーナ王女様から臭ったりいたしませんわよね」
「――――ずいぶんと古めかしいご衣装で……」
言葉をオブラートに包みもせずに、明らかな嘲笑まじりの言葉にイルファーナ王女はにこやかに微笑む。
「申し訳ございません。祖母のドレスでしたので………」
時代遅れのドレスは承知の上できたのだ。
イルファーナ王女の動揺のかけらもみあたらず、三人の女性たちは僅かに怯む。
いじめ、というのは相手がこたえるから愉しいのだ。
「ま、まぁ、早くお召し替えをなさらないと…………。お風邪を召してしいますわ」
「ご心配ありがとうございます。ですが、私もやわな姫君ではございませんから」
「―――――そうですわね。王女様のお国は我が国と違って農業しか………いえ、長閑なお国でいらっしゃるから……」
「ええ。本当によい国ですのよ。一度いらして下さいね」
「――――まあ、田舎……いえ、私にはそんな泥くさい、……静かな何もない国など………」
「マリア様、参りましょう」
三人の女性たちは自分たちの厭味も届かない王女の相手をやめ、優雅な仕種でその場を立ち去る。
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