事の始まり

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一ヶ月前―――――。 「うーん、やっぱり金持ちの国に嫁ぐか……」 「ブッ――――!」 イルファーナの突然の発言に、隣にいた青年は飲んでいたお茶を勢いよく吹き出す。 「―――っ、汚いわね」 「ワリィ…………けど、王女の発言のせいだろう」 イルファーナが王女と知っても、態度を改めないこの青年は二ヶ月ほど前に城に来た。 どこから来たのか、まったく解らないが、城で勤めることになったのは王女のくちぞえがあってのこと。 ふらりとこの国に来て、国王や王妃の信頼を得て、イルファーナ王女つきの従者になった。 暢気なこの国らしいといえばそれまでだが、普通身元の知れない者を城に上げたりはしない。 (………まっ、うちの国がいかに無視されているかってことよね) 彼女たちのいるエネリア国は小さな小国だ。 周りは大国に囲まれ、その国土も大国の首都ぐらいしかない。 貴重な鉱山があるわけでも、技術力があるわけでもない。 ただ、歴史の古い国に過ぎない。 農業国だが、つまるところそれ以外に成り立つものがなく、国民もけして豊かではない生活をしている。 故か他国に狙われることもない。 重要な道があるわけでもない。
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