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それ故なのか、国民性なのか………警戒心が薄い。
誰も彼も信じるわけではないが、青年のようにふらりとやってきても、信頼を勝ち取れば、城にさえ勤められる。
「―――――んで、何でそういう考えになったんです?」
二人の目の前には豊かな自然と畑が広がっている。
秋には実りをもたらすだろう。
「この国を見てみなさい」
「いい国だと思いますが?」
静かで争いも少なく、お人よしの国。
「そんなことはわかっているわ!」
イルファーナもこの国が大好きだった。
いい国だとも思っている。
人が良すぎるきらいがあるが、人を疑ってかかるよりましだ。
だが、問題はそこじゃない。
「――――無理に国を大きくするつもりも、豊かにするつもりもないわ。けど…………このまま、父様の代はいいにしても…………次は……」
イルファーナが言い澱む。
その言葉の先を理解した青年は小さく息を吐いた。
「―――――確かに心配っすね」
青年の言葉にイルファーナもため息をつく。
二人の脳裏に浮かぶのはこの国の第一王女にして、世継ぎの姫…エリザだった。
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