事の始まり

3/11
前へ
/23ページ
次へ
それ故なのか、国民性なのか………警戒心が薄い。 誰も彼も信じるわけではないが、青年のようにふらりとやってきても、信頼を勝ち取れば、城にさえ勤められる。 「―――――んで、何でそういう考えになったんです?」 二人の目の前には豊かな自然と畑が広がっている。 秋には実りをもたらすだろう。 「この国を見てみなさい」 「いい国だと思いますが?」 静かで争いも少なく、お人よしの国。 「そんなことはわかっているわ!」 イルファーナもこの国が大好きだった。 いい国だとも思っている。 人が良すぎるきらいがあるが、人を疑ってかかるよりましだ。 だが、問題はそこじゃない。 「――――無理に国を大きくするつもりも、豊かにするつもりもないわ。けど…………このまま、父様の代はいいにしても…………次は……」 イルファーナが言い澱む。 その言葉の先を理解した青年は小さく息を吐いた。 「―――――確かに心配っすね」 青年の言葉にイルファーナもため息をつく。 二人の脳裏に浮かぶのはこの国の第一王女にして、世継ぎの姫…エリザだった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加