9人が本棚に入れています
本棚に追加
この王女―――良い意味でも悪い意味でもこの国そのものだ。
本来の気質がそうさせるのか、育ちのせいか――のんびり……というか、ぼんやりというか……おっとりとした性格をしていた。
「………そう言えば……一昨日ぐらいですが、エリザ様が荷物を抱えていたので、代わりにお持ちしたんですが…………」
「――――知っているわ」
青年の言葉を遮る。
本人から既に話は聞いていたのだ。
『聞いて、ファーナ。私ったら、カルに荷物を持ってもらったのに、何もないところで二回も転んでしまったの』
朗らかに人事のように話す姉にイルファーナは頭を抱えた。
(……何故楽しそうに言うの………姉様……)
妹として長い月日を過ごしてきた、と思うのだが、まだまだ姉を理解できない。
それでも大好きな姉がこの国を継ぐ。
他国に気にもされないこの国では、王族といえど恋愛結婚が多かった。
国王に野心が少なく、政略結婚になりにくかったのだ。
王女たちの祖母は珍しく隣国フォーレンから嫁いできた姫だった。
「………でも、王女様の御祖母様は隣国フォーレンのお姫様だったんですよね。その誼みはないっすか?」
「無理よ。付き合いがないし、そもそも御祖母様がこの国に嫁いできたのだって奇跡よ」
王女の言葉に青年は笑う。
最初のコメントを投稿しよう!