scene 1

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  今の俺には足音さえ恐怖で。だがそれでも尚、懐かしい"動くモノ"への期待を抱いた。   恐る恐る、教室から出て廊下に立った。   威嚇と見栄と。 廊下の真ん中に仁王立ちになった俺。 そしてそんな俺を真正面から見つめてくる――   女。     少し汚れた制服姿で、まるで珍しいものでも見るかのように俺を見据えている。 否、"珍しいもの"なのだ。今となっては―…   ごくり、と俺は思わず唾を飲んだ。 いつの間にか喉がからからに乾いている。     長い長い沈黙。     お互いがお互いに巡り会えたことがまるで奇跡であるかのように、それが幻覚でないかを確かめるように。       「あの……っ」   「あなたも…?」   沈黙を破ったのは、俺。 しかしまるでその先の言葉を言わせないかのように、間髪いれず彼女の声が響いた。     俺は何も言えず、ただ頷く。    
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