24人が本棚に入れています
本棚に追加
今の俺には足音さえ恐怖で。だがそれでも尚、懐かしい"動くモノ"への期待を抱いた。
恐る恐る、教室から出て廊下に立った。
威嚇と見栄と。
廊下の真ん中に仁王立ちになった俺。
そしてそんな俺を真正面から見つめてくる――
女。
少し汚れた制服姿で、まるで珍しいものでも見るかのように俺を見据えている。
否、"珍しいもの"なのだ。今となっては―…
ごくり、と俺は思わず唾を飲んだ。
いつの間にか喉がからからに乾いている。
長い長い沈黙。
お互いがお互いに巡り会えたことがまるで奇跡であるかのように、それが幻覚でないかを確かめるように。
「あの……っ」
「あなたも…?」
沈黙を破ったのは、俺。
しかしまるでその先の言葉を言わせないかのように、間髪いれず彼女の声が響いた。
俺は何も言えず、ただ頷く。
最初のコメントを投稿しよう!