scene 1

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    「……そう。」   ただ、無表情に。       誰かに出会えた安堵。けれどもそれは、いま見ているこの世界が自分一人の夢ではないことを意味していた――         「名前は?」     「…分からない。」     「……そう。」     「………。名前は?」     「……分からない。」       あとに残る、どうしようもない虚しさ。         けれどもお互い相手以外に誰もいない状況の中、ごく自然に俺たちは並んで歩き始めた。何処までも続いて行きそうな冷たい廊下を。       舞台上は薄い照明に満ち、物語の幕がゆっくりと開き始めた。   客席からの拍手は   聞こえない。    
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