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side"私"
屋上からの景色を眺めながら、微かな焦りと胸騒ぎを感じた。
怖い……
根拠の無い、ただ漠然とした恐怖。
とにかく此所から出よう。
空しく広がる屋上を反対側へと横切る。
鉄の扉は重々しく立ちはだかっていたが、幸い鍵はかかっていなかった。
中には、暗い階段が続いている。
深呼吸を一つして、恐る恐る降りた。
しかしやけにがらんとしている。
廊下に出た。
長い廊下には誰もいない―…
途方に暮れ、ただ歩く。
此所は私の通っている学校なのだろうか…?
親しみを感じられなかった。校舎にも、教室にも。
ふと気になって胸元のポケットを探る。
何も入っていない。
生徒手帳があれば良いと期待したのに。
更には、制服には名札すらついていなかった。
自分の鼓動の音が響く。
自分が思い出せない――…
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