scene 1

6/10
前へ
/24ページ
次へ
  俺は教室の机の上に座ってあぐらをかき、じっと考えた。    何を?     "自分が何者か"。   唐突に襲い来る不安。 思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない……   ふと、カメラのフラッシュのように脳裏を何かが横切る。 声…… あの実験室で何か叫ぶ声。 自分の声だ。あの実験室で俺は叫ぶ。それが最後の声…   『会いたい』     ……?   確かにそう叫んだ。 誰に?   苦笑。それ以外何も覚えていない。 様々な記憶が閉じ込められて、狭い通路から出れずにもがいている。   思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない……     苛立ち。 気付くと俺は教室の中をぐるぐると歩き回っていた。 苛立ち。 握り締めた拳が壁を激しく殴った。壁が揺れ、鈍い音が響く。    
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加