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でも結局見付からなくて、気付けば夕闇の中、部活も終わる時間になっていた。
「…ごめんね」
「え?」
「私のめんどうに巻き込んで、部活休ませちゃって…」
「気にしないで」
諦めてきた私とは違って嫌な顔ひとつせず捜索し続ける姿が、私は不思議でならなかった。
「どうして、そんなに優しくしてくれるの…?」
同じ陸上部と言えどクラスも競技も違ったし、まともに話したことがあるのかさえ曖昧なのに、こんな風に尽くされるのは忍びなかった。
すると、草の根まで掻き分けて探す手を緩めぬまま、暇潰しのようなトーンの答えが返ってきた。
「1年の時にさ、私も靴隠されたことあって、その時に陸上部のみんなが探してくれたんだよね。…薫ちゃんの一言で」
たぶん私のことだから、好感度が上がって、かつ早く帰るために皆に知らせたんだと思うけど、やっぱり記憶が定かじゃない。
…自分でも思うけど最低だ。
「それですぐ見つかったんだけど、見つかるまでオロオロしてた私をずっと励ましてくれてたのが、薫ちゃんだったんだ」
たぶん私のことだから、探すの面倒くさくて側で励ますフリをしていたのだろうと思う。
…やはり最低だ。
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