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そんな風に錯覚させるほど、あゆちゃんは素直で可愛かった。
たぶん意識してない人には普通に口説き文句みたいなことが言えて、逆に意識し出したらまったく言えなくなるとかそういうタイプだろう。
…でもそう言われて悪い気はしない。
実はスタイルいいし、例え素直じゃなくなったとしても照れ隠しなら可愛いと思えるし、そこまで粘着質でも、ワガママを言う性格でもないだろう。
―あゆちゃんだったら付き合ってもいい。
そんな思いが一瞬脳裏を掠めた時、それを読んだかのように奴が現れた。
「アラー。珍しく仲良しじゃない」
「輝、暑いよ」
何でもない口調で近付きながら、あゆちゃんにのし掛かり、密かに牽制するその瞳は鋭く光る。
それなりに可愛くて隙なんかアリアリなのに、あゆちゃんに男の影が見えないのはきっとコイツのせいだ。
自分の位置カテゴリをフルに利用して、あゆちゃんに悟られないようにこうやって入る隙のないところを見せ付けてきたのだろう。
本当はコイツみたいな卑怯なやつこそが、追い払われるべきなのに。
付け入ろうとも思ってないが、コイツの面倒くささとウザさを初めて真っ向から感じた。
「…暑苦しいやつだな」
「何よー。あゆにちょっかい出さないでくれる?」
「どちらかと言うと絡まれたのは俺だけど」
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