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俺の気だるくも的確な台詞に輝は目を剥いて驚き、あゆちゃんの両肩を掴んで勢い良く自分に向き直らせた。
「ホントなの?!」
「そうだけど?」
「ダメよ、こんな無感情無関心なくせに金にだけは強欲で身勝手な男に近付いたら!傷つくだけよ!」
「毎日バイトいれてるだけだろうが。俺は稀代のワルか」
誇張してまで必死に諭そうとする輝に、思わず突っ込まずにはいられない。
しかし輝の思いも虚しく、あゆちゃんは信念を通して言い切った。
「私は槙村くんともっと仲良くしたいの。輝は黙っててよ。てゆうか友達を酷く言うなんてサイテーだよ」
繋ぎ止めるように掴んでいた手は煙たそうにほどかれ、さらに顰蹙をもかった輝は、ショックを受けてあゆちゃんに言われた通り何も言わなくなった。
別に俺と輝は友達かどうかは微妙な線だけど、ハッキリと情を確かめることもなくなったこの年齢でのあゆちゃんの無意識の台詞には、気恥ずかしいようなクサイような、とりあえずけっこうイイ気分だ。
そんな俺とは真逆にイイことなどまったくなかった輝が、あゆちゃんには決して見せない座った目付きでどこまでも堕ちた本音をもらした。
「………死ね槙村」
「おまえが死ね」
俺のiPodを完全に独り占めし、聞き惚れているその両脇で、お互い消滅を願う言葉が交わされたことを、あゆちゃんは知らない。
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