導かれた先は

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その時。   誰もいなくなった筈の教室で、ふと人の気配を感じた。       「どうしたの?」       ロッカーの前で俯いていた私の背中から、聞き覚えのある声がした。   泣き顔なんか人に絶対見られたくなかった私は、背を向けたまま荒く涙を拭う。   すると見透かされたような台詞が、耳に届いた。       「もしかして…、ジャージ盗まれちゃった?」       図星を突かれた私は、思わず硬直した。   だけどそれも一瞬で、人に言われてさらに苦汁を舐めさせられた私の体は小刻みに震えだし、拭った涙はまた止めどなく流れ出した。       「大丈夫、大丈夫。一緒に探そう?」       いつの間にか私のすぐ側まで来ていたその人は、私が泣き止むまで私の頭を撫でていてくれた。   泣き止んだ後も、手を繋いで一緒に私のジャージを探してくれた。       「薫ちゃんは可愛いくて何でも出来てカッコイイから、みんな嫉妬しちゃうんだよ」       そんな風に慰められながらゴミ箱をあさり、掃除ロッカーやトイレや、至るところを二人で捜し回った。  
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