0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
夏祭りの雑踏の中、
手を伸ばして、君の手首をつかんだ時、
君は困った顔をしていた。
キミがこの手を振り払ってくれていれば、始まらなかった。
もしキミが一言でも声を発していたら、
僕はこの手を離していただろう。
けどキミは口をつぐんだまま、下を向いていた。
夏祭りのど真ん中にいるのだ、
そこらじゅうに声が散乱している。
たこ焼き屋のおばちゃんが客引きをする声、
女の子同士がアクセサリーの露天でどれにするか相談している声、
男が女の耳元で何かをささやき声、
遠くで聞こえる男の罵声、子供の泣き声、
笑い声。
そんな雰囲気の中で、
僕らの沈黙はひどく浮いていたのかもしれない。
しかし、
僕らを注目する人間は皆無だろう。
ただ、神様は気付いていただろう。
僕達の異質さに…
最初のコメントを投稿しよう!