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「なら、俺はどうすればいい?」
「1日1回、私の相手をして」
「それで足りるのか?」
「少なくとも、1日は」
「……了解だ。明日同じ時間、ここに来い」
「制限時間は?」
「1時間。それを過ぎても現れなかったら、遠慮なく会社に行く」
「手厳しいね」
「かなり譲歩したぞ?」
「そっか」
少女は笑顔のまま、歩き出した。
「それじゃあまた明日、お兄さん」
「午後くらい授業は受けた方がいいぞ。そうしないと色々足りなくなるからな」
「考えとくよ」
それから少女は振り返ることなく、公園を去っていった。
止詩はしばらく少女が去った方を眺め、まだ手に遺書を持っていることを思い出した。
「……捨てるか」
ビリビリと細かくちぎり、ゴミ箱に放り込んだ。小さなカケラが風に乗って飛んでいくが、追うつもりはない。
止詩はもう一度、少女が去った方向に目をやった。
「……会社に行くか」
腕の時計を見るといつもの1時間は過ぎていたが、走ればまだ間に合うだろう。
明日からはじまるであろう退屈しない1時間。当初の目的からは外れてしまうが……退屈しないなら、それでもいいかもしれない
止詩は鞄を脇に抱え、ゆっくりと走り出した。
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