儚き祈り。強き願い。

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偵察に向かった義経達は、山道でどっかりと腰を下ろしていた僧侶に出会う。 道々いくつか山寺を目にして来たが、他の僧侶達は托鉢に出ているのか一つの人影すら見かける事はなかった。 この山で初めての、仲間以外の人である。 見た目の大まかな風貌は弁慶と同等だが、眉尻が幾分か垂れ下がり気味の為か、気弱な印象を受ける。 その僧侶を見るに幸いにも忙しそうでは無く、鼻提灯を作っては壊すの繰り返しで、そこから動き出す様子もない。 義経が声をかけようと一歩踏み出すと、それを弁慶が止める。 「この僧侶、某に覚えがあります」 某にお任せを、とドスドスと力強く踏み出し僧侶の肩をグッと掴むと、前後左右に力強く振り始める。 その勢いには誰とて抗える筈も無く、やはりこの僧侶も例に漏れず直ぐに目を開けたが弁慶を見るや、著しく怯えた様子を見せ、勢い良く尻餅をついた。
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