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「それは真か、海尊」
その問いに、眉頭を八の字にしながら弁慶と義経の顔を交互に見やって、視点のようやく定まったところで激しく頷く。
「は…はい…、義兄弟の契りを交わしました…」
その風貌に似合わぬ消え入りそうな声が神経を逆撫でしたか、弁慶は海尊をグッと睨み付けて背中をバシンと叩くと、大きな声で海尊を責め立てた。
「その惰弱な物言い、未だ治らなんだか!某が比叡を後にする折、治すよう申し付けたであろう!」
その勢いに圧され、ひぃ、と悲鳴にも似た声を出し頭を覆う海尊を哀れに思い、一人の郎党が止めに入る。
「弁慶殿、何も怒鳴る事は無かろう。無抵抗な者をかように扱うなど、其方は何と小さき男か」
身の丈は弁慶達に劣るが、張りのある、良く通る声で弁慶を制し海尊の前に立ったのは、源有綱。
「弱き者に力を奮うなかれ。其方は比叡で何を学んだのだ?御仏の慈悲の心ではなかったか」
片腕を広げて海尊を庇うような姿勢で弁慶を見上げる有綱に、海尊は自分よりも小さな有綱の背中に隠れるようにして、弁慶を窺う。
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