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寄せては返す波。
たゆたう船の残骸。
その先には武者姿の者、美しい着物を纏った女など、幾人かが打ち上げられている。
彼らは先の戦で華々しい戦功を挙げていたにも関わらず、兄である源頼朝に逐われる羽目になった義経一行である。
遡る事、数時間前。
京都・堀川の屋敷で、義経と郎党数人が頼朝の放った刺客の襲撃に遭う。
斬り込んで来た刺客を捕らえ梟首にしたが、次々に飛び込んで来る敵の数に衰えが見られず、屋敷が多勢に取り囲まれているのは容易に想像出来た。
静を守りながら奮戦する義経の背中にぴたりと貼り付き、幾人もの武士を斬り伏せ活路を開いたのは佐藤忠信であった。
手勢200余騎で屋敷を脱出、海路にて豊後国(現在の大分県)を目指し、そこで援軍を請おうとしていたが、思わぬ嵐に遭い船は大破。
甲冑のまま海へ放り出され、水の冷たさ・重さを何度も感じつつも、側で溺れかけている静を抱えて陸へ上がったところで、義経の疲労は限界を迎える。
屈強と名高い弁慶ですら、義経の正室である郷(サト)と郎党を数人救出したところで疲労に負け、横になってそのまま動かなくなった…。
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