終わるは、始まり。

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それから一時。 いち早く気を戻した義経は、先ほどの敵襲に思いを巡らせる。 『ここは私にお任せを。必ず追いつくとお約束致します』 激しい刀戦の中で、自分や仲間を逃がす為に囮となった忠信の言葉が、胸を締め付ける。 忠信は屋敷を抜けられただろうか…。 もし合流出来なくとも、忠信が無事であればそれで良いと、義経は思っていた。 「義経様、お怪我はございませんか」 義経の次に気を戻した弁慶が、頭を振り振り話しかけて来た。 「某(それがし)は板きれで頭をしたたか打ちましてなぁ。いやはや、人並みの頭(かんぶり)の大きさであれば、こうはなりますまい」 暗い顔をしている義経を気にしていないような素振りで、頭をポンポンと叩きながら、 「まあ、中身は詰まっておりませぬ故、器を取り替えても変わりはないのですが」 ははは、と笑って頭を掻いて見せた。 どんなに劣勢の戦でも、弁慶は笑っている。 継信を失った時も、皆が号泣する中でただ一人、涙を見せなかった。 そして今回も弁慶は、采配をしくじった義経を責める気配など微塵もない。
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