平和な1日

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「くぁ・・・あふ。」 大きい口を開けあくびをする。 茶色の瞳に浮かんだ涙もそのままに秋雨瑠奈(あきさめるな)は高校への通学路をだらだら歩いていた。 5月の爽やかな朝も瑠奈の眠気は払えなかったようである。 「ふぁ・・・ふ。だるいなぁ・・・ん?」 美人の部類に入る顔に怠惰を滲ませながら、瑠奈は瑠奈と同じ高校の制服を着たたくさんの人の中から見慣れた黒髪の頭を見つけた。 ・・・ニヤリ 一気に覚醒した瑠奈は足音をたてずにその黒髪の少年の背後に忍び寄る。 「陣っっ!おはようっっ!」 中身の入っていなさそうなカバンをグイッと引っ張る。 「うおわっ!?」 不意をつかれ少年はバランスを崩し後ろに倒れそうになった。 体勢を立て直した黒髪の少年ー黒須陣(くろすじん)は瑠奈を睨みつけ、その整った顔を歪ませ怒鳴る。 「瑠奈っ!毎朝毎朝いい加減にしろ!」 「ただの挨拶じゃない。可愛い顔が台無しよ陣チャン♪」 ニヤリと瑠奈が笑うと陣は眉を吊り上げる。 陣は整った顔をしているが若干女顔であり、それがコンプレックスである。 「てめぇ瑠奈っ・・・あ?」 いきなり陣の目の前が塞がる。 男女の平均的身長よりも高めな陣や瑠奈のさらに頭2つ分高い少年が瑠奈と陣を遮っていた。 「律っ!ジャマ!」 「あー律っちゃんおはよう~」 「・・・おはよう瑠奈。陣も、おはよう。」 二人の脇に避け、神崎律(かんざきりつ)はその茶色の細い瞳をさらに細くするようにふわり、と笑った。 「とりあえずおはようっ!律っ、ジャマはすンな!瑠奈のヤツまた可愛いって言いやがった!いっぺんシメてやる!」 「事実じゃないの。男子からも呼び出しされるくせにぃ~」 「!!瑠奈コノヤロ・・・」 再び熱くなった陣をなだめながら律は静かに口を開いた。 「・・・二人とも、遅刻したいのか??」
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